草の根活動の紹介

歴史的建造物が「今」ともに生きる ~「ロング&スロー」を合言葉に

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NPO 小樽ワークス(歴史的建造物再生保存) | 小樽市

近代化と都市整備により、日本の多くの街が歴史的建造物を失ってきた。特に、開拓以降の歴史が浅い北海道では、明治や大正に建てられた歴史的建造物の多くが、さしたる反対運動もないまま、いとも簡単に取り壊されてきた。また、市民の側にも身近な学校や個人住宅などの歴史的建造物が「マチの財産」という意識は薄かった。今その反省とともに、近代の歴史的建築物の再評価と保存活用の動きが全国で拡がっており、道内でも、大学の研究者や市民有志らによる保存活用運動が各地で根付き始めている。

NPO小樽ワークス(遠藤謙一良代表)は、そうした団体の一つ。小樽市に残る坂牛邸(施主 坂牛直太郎氏、田上義也設計)の保存・再生・活用を通じて、小樽の歴史的建造物や景観の活用を考え、まちづくり活動を行なうために、2008年にスタートした。「高度成長が終わり、物事の価値を確かめ、質感を味わう現代において、この街にしかない、個性的な都市景観・固有の文化が、深く理解される時が来ました」と、その設立理念をホームページに謳う。

個人で手元における絵画や彫刻と違い、歴史的建造物は維持保存するのに膨大な経費がかかる。将来にわたって継続的に保存するには、地元住民と行政の理解と協力が不可欠だ。文化資産の価値の共有と活用保存という、正に今日の文化行政の最先端のような現場なのである。同NPOは、建物周辺の清掃作業や雪おろし、建築の講演会など、地道な活動を通じて市民の理解を広げつつある。近代遺産を活かして、文化都市小樽をつくるという同NPOの試みは、まだ始まったばかりだ。

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