ナウトピアのつくり方

田舎での仕事づくり とりあえずよろず屋からはじめる!

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田舎には仕事がないとよく言われる。そうやって、仕方がないねと、都会に戻る人も絶えない。けれど、老人ばかり住んでるところに、若い人が来て、やることがないはずはない(ちなみに私がいるところでは50代までお兄さん、お姉さんと呼ばれるほど高齢化が進んでる)!ちょっとした家のメンテも体が動かなくてできないけれど、専門業者に頼むと高すぎて・・・とこぼしてる人、包丁握ったこともないのに奥さんに先立たれた人、過疎地で公共交通機関もほとんどないところに、車の運転ができなくなって、買い物にも郵便局にも行けない人などたくさんいる。それでも「仕事がない」という人は、よほど観察力がないか、コミュニケーション不全に陥ってるとしかいいようがない。あるいは頭が固すぎて、「仕事とはこういうもの」「自分は・・・する人」といった先入観に固まってしまってるのかな? 田舎暮らしに成功する人の共通ファクターは、わりとはっきりしている。住む場所だけでなく、価値観や物の見方も変える準備があるかどうか。それができない人は、だいたい都会に戻ってるようす。

とりあえずよろず屋の看板を出し、人づきあいを楽しみながら、互いの事情をふまえながら、相応のお礼をきちんともらうことができれば、食べていけるはず。

なるだけ特化せず、おおくくりに、よろずやからはじめるというのが、ポイントかも。そんなよろず屋がある程度増えて来たら、それぞれやりたいこと、特技にしたがって、分業をすすめる。そうこうするうちに、経済的に全く死んでしまった地域に、そこにとどめをさしたグローバリゼーション以前にはちゃんとあった自立した地域経済、少しずつ復活していくかもしれない。

一人一人、特技、趣味、出来ること、できないことがあるのも確か。ただ、その制約内でよろず屋になることは出来ると思う。たとえば、20年以上教育職、研究職についてその方面はいろいろやってきたけれど、力仕事や大工仕事、機械を使ったことはできないわたしは精神労働・心の「よろず屋」。悩みを聞いたり、相談にのったり、起業などのアイデアをまとめる手伝い、コンサルティングをやったり、教えられることは教えたり。パートナーのとしさんは30年以上絵描きをやってきたけれど、田舎では、なんてもアートの「よろず屋」。クリエィティビティや美的センスが必要なところには、どこでも入り込んで手伝う。

そんなふうに、自分の管轄領域の「よろず屋」やとして、出来ることならなんでもやるくらいの覚悟で、はじめる。過疎化が進んでいるということは、若い人だけでなく、全体的に人材不足なのだから。あとはとにかくコミュニケーション力、観察力! 反応をうかがい、様子を見ながら、回るものは残し、回らないものは、潔く切り捨てて行くうちに、だんだん仕事の輪郭ができていく。どんな仕事が始めるか、予測もつかないところが、また面白い!

ただ、この「様子見」の対象として、周りの人たちだけでなく、自分も含めるのも大切なこと。いくら必要とされても、できないことはできないし、嫌なことは続かないものね。理想的には、人に喜んでもらえて、自分もうれしい。そのうれしさが、周りに伝わり、それにあやかりたい人から、また依頼がくる・・・喜びをシェアし合いながら、どんどん膨らませていく。そんな好循環が生まれたらもうこっちのもの。

そんな具合に、しばらく「何屋さんかわからない」状態を楽しむことが続くと、こんどは、もっと深めたい。アイデンティティを打ち出したいと思う時期がくる。なぜこんなことをやってるのか、自分にとって、人にとって、社会にとってどんな意味があるのか・・・そんなことを再考したくなってくる。まとめの時期だ。そういう気分になってきたら、ちょっと立ち止まって、屋号や企業理念について考えたり、名刺を作り直したり、夢をふくらませたりするのもいい。わたしは今、ちょうどそんな時期。夢中でつっぱしってきたけれど、これまで身につけて来た知識、外国暮らし、社会活動の経験をもっと活かしたり、著作業と手作り癖を一つにまとめることってできないかなと考え始めたところ。というわけで、手編みの手袋に、何を考えて、これを作ってるのか、「手作りの意味」について今自分が考えてることをまとめた小冊子を付録につけてセットで売るアイデアを思いついたよ。

北海道のナウトピア.1. 表紙

そんなふうに、周りの人や自分自身の観察とコミュニケーションを怠らず、時期に応じて内容を広げたりまとめたり・・・等身大の無理のない仕事づくりを楽しみつつ、今に至ってる。

仕事の話をすると、いつも、ちゃんと収入あるの? 生きていけるの? という話になる。もちろん収入は減る。でも、田舎暮らしを始めるにあたって、住む場所だけじゃなくて、価値観や物の見方も変えることに成功すれば、自由な時間、空間、広い意味での資源が増え、人付き合いが増え、現金依存度を減らしながら、高い暮らしの質をキープ出来るようになる。ストレスからの出費も無くなるし。そうした出費源をプラスして、収入源をマイナスすると、これまでの収支決算とそんなに変わらないことに気づくかもしれないよ。

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