草の根活動の紹介

ホールで育つ子供たち~あさひサンライズホールがマチと描く夢~

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あさひサンライズホール | 士別市
公共ホールは優れたまちづくりの装置となりうる。それを体現する意欲的な自主事業を次々と打ち出し、全国から熱い注目を浴びているのが、北海道士別市の「あさひサンライズホール」(1994年オープン)だ。

演劇製作は、誰もが参加することが出来る場所を提供できる、優れたコミュニティ・ツールとしての側面も併せ持つ。表方裏方含め全員に役割があり、全員が一つの舞台を作り上げる感動を共有する。また、公演をきっかけに、人と人とを新たに出会わせたり、住民同士が関係を深めたりすることで、地域コミュニティーの成熟を助ける。

企画・運営を担当するのは市教育委員会の漢幸雄さん(50歳)。1993年から、朝日町(当時)職員として開設準備にあたり、2005年の士別市との合併後の現在まで、プロデューサーとして活躍する。開館当初から、演劇を中心に質の高い鑑賞型事業を展開。それを実現させるために、道内の公共ホール同士のネットワークを作り上げ、共同招聘で手間と経費の負担を軽減するなど知恵を絞ってきた。オープン10年目の2003年、満を持して住民参加劇に着手。長期間のワークショップを経て、プロの脚本と演出の指導による住民劇を毎年上演するようになった。

また、オープン当初から子供の舞台経験を重視、地元小中学校の学校祭をホールが全面支援。全校生徒たちは、ホールの照明と音響の中で演じ歌い踊る体験を楽しむ。2007年からは、市内の全17の小中学校に、プロの芸術家を授業に派遣するアウトリーチ事業を行っている。舞台芸術を楽しむ経験をした子供達が大人になり、自分の子供に芸術の楽しみを伝え、この循環が続けばマチ全体が文化を愛する町になる、という目論見だ。実際に、学校側からは「生徒が自分で考え、発言し、行動するようになった」と評価が高い。また、同ホールの子供達を相手にワークショップを開いたアーティスト達は「鑑賞眼が出来ている」「舞台に馴染んでいる」と口を揃える。「子供は地域の宝物。継続して関わり続けることが大事」と漢さんは語る。

コミュニティ・ホールとして地域を活性化してきた実績を認められ、サンライズホールは2005年度JAFRAアワード(総務大臣賞)を受賞した。

行政マンとして、いま公共ホールが行うべきことは何か、学校や住民と緊密な連携を図りながら、マチの将来を見据えて布石を着々と打っている。

※旧称:朝日町サンライズホール(市町村合併により平成17(2005)年9月以降、あさひサンライズホールと改称)

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