イベント

ヘレナさんの『幸せの経済学』

  • LINEで送る

10月21日、13時30〜15時30分、りふれ(北海道夕張郡長沼南町3番1号)で、『幸せの経済学』の短縮版上映会と、その監督ヘレナ・ノイバーク=ホッジさんの講演会を行います。以下はその映画解説。

グローバリゼーションにより、大企業が国境を越え、各国の地域経済に入り込み、規制緩和などを追い風に自由に事業展開をはじめました。

昔ながらの交易は、その土地にないものを交換し合うものでしたが、グローバリゼーションのただ中で、金儲けの機会を伺う企業は、そんなことお構いなし。地元にふんだんにあるものも、安い値段で、どんどん売りつけてきます。外国産の安物に押されて、貴重な文化伝承を担う無数の地場産業が、農業が、買い手を失い衰退していきました。味噌、醤油といった伝統食でさえ、大豆はアメリカ産が大半になってしまいました。近くで取れるものさえ、わざわざ遠くから取り寄せるこのやり方では、鮮度が落ちるのはもちろん、エネルギーの浪費や大気汚染も進むばかりです。TPPが導入されると、ますますこの傾向は高まることが予測されます。

グローバリゼーション到来以前、人々は、地元にあるもので衣食住の大半をまかなっていました。と聞くと、ずいぶん貧しい暮らしだったんじゃないかと想像しがちですが、ヘレナさんが見た当時のラダックは、グローバリゼーション導入後のラダックより、ずっと豊かだったそうです。標高3000メートル以上の高地で、栽培可能期間は4ヶ月のみという過酷な条件下で、主に農業を生業としながら暮らしていましたが、飢餓も貧困も知らず、広大な家に住み、十分な余暇には祭りを楽しみ、チベット密教の深い精神的な文化も息づいていたといいます。その秘訣は、各地域がまかなえるだけの人口を抱えながら分散して住んでいたこと、また、その土地の自然に寄り添い、あるものを無駄なく最大限に生かし、土地の恵みだけで生きていくための知恵やノウハウ、ライフスタイルがしっかり伝承されてきたことにありました。それらは、私たちが再び、持続可能で地球に優しい暮らしを始めようとするとき、大いに参考になるものです。

しかしグローバリゼーションの進展とともに、外国から魅力に溢れた安い製品が押し寄せます。それにつれて、そこにあるもので必要を全てまかなってきた地域経済も崩壊。故郷で昔ながらの方法で生きる術を失った人たちは、富の集中する都会へと流れこみ、働き口を探さなければならなくなりました。

不安定なグローバル経済はまた、勝ち組・負け組を生み出し、貧富の差を増大させます。さまざまな宗教的ルーツの人々が混在する都市で、サバイバルのために限られた量の資源や仕事を争ううちに、宗教対立やテロリズムも激化することがしばしばです。

都市への人口の集中がすすむとともに、核家族化もすすみ、拡大家族を中心にしたコミュニティの絆や、文化継承の場も失われていきました。そこで育つ子供達は、身の回りの人々よりも、メディアの中の理想化された(多くの場合西欧人の)イメージからアイデンティティを形成するようになりました。そこでは広告を垂れ流す大企業が子供たちの嗜好を形成し、子供達を育てているような事態が生まれています。それはまた劣等感をかき立て、自分の文化的なルーツを「恥ずかしい」と否定するメンタリティを生み、一層の文化的断絶を進めると同時に、大量消費に駆り立て、資源やエネルギーの枯渇にも拍車をかけています。

そんな私たちに必要なのは、ふたたび地域で必要なものを地域でまかなうローカリゼーションです。ヘレナさんが報告するグローバリゼーション以前のラダックの様子は、ローカリゼーションによって私たちの暮らしが、精神的にも物質的にもゆたかなものになり得ることを教えてくれます。また、この映画でも紹介されているトランジション・タウンやファーマーズマーケットなどの例は、ローカリゼーションが、私たちの今の日常の暮らしの延長上で、自由に、おしゃれに、クリエィティブにもすすめられることも教えてくれます。

ローカルな経済は、職住近接で家族との時間もたっぷり、地元産の新鮮で安全、美味しい食べ物にあふれ、交通・輸送にかかるエネルギーもぐっと低下、顔の見える関係のおつきあい、コミュニティの絆も濃厚になるというふうに、いいことずくめなのです。

ただそれをすすめるためには、地元の中小企業が、多国籍大企業と、補助金、規制などの上で公平に扱われ、対等のビジネスチャンスが得られるようにすることが、欠かせません。

***
クイズ 以下、正しいものが3つあります。どれでしょう? また、間違っているものの、間違いを正してみましょう。答えはすべて映画の中で出てきます。

1、グローバリゼーションは、約50年前にはじまりました。

2、交易とは昔も今も、基本的には、自国にないものを輸入し、自国で余っているものを輸出するものです。

3、アメリカでは毎年、365,350トンのジャガイモを輸入していますが、同時に、そのほぼ同量、324,544トンのジャガイモを輸出しています。

4、巨大化する多国籍企業の中には、その資金が一国のGNPを凌ぐものもあります。でも、法の力がストップをかけて、国をコントロールして、その経済政策にまで影響を及ぼすほどになるまでは、まぬがれています。

5、各国は、多国籍大企業の規制はますます緩和し、自由な事業展開を許す一方、自国内の企業は規制でますます締め上げています。補助金も、すでに十分大きな多国籍大企業に投入される傾向にあります。

6、第三世界援助のためにに送られる融資は、それらの国々が経済的に自立するのに役立っています。

7、第三世界への援助は、多国籍大企業や銀行に、ビジネスチャンスを与えるばかりです。

8、グローバリゼーションと民族間の宗教対立・紛争は、直接関係しません。

  • LINEで送る