ナウトピア用語集

まるごと変える!

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部分的な解決をガス抜きに使うことで、全体的な解決にストップがかけられることってよくある。アボリジニたちにメッセージを託されながら、共に暮らしたことのあるアメリカ人マルロ・モーガンによると、アボリジニの人たちは、白人の宣教師が、食事の前に感謝の祈りをするようにと諭されて、とても奇妙に感じたという。(マルロ•モーガン『ミュータント・メッセージ』角川文庫)

というのも、そんなことしなくても、彼らは感謝と共に目覚めるし、必要なものが手に入ることを、あたりまえだなんて思ったことはない。自然、とくに大地など、人間以外のあらゆるものにも感謝を捧げ、それをすべての行動であらわそうとするから、必要以上のものは絶対に取ろうとしないし、お返しできるチャンスは逃そうとしない。つまり生活全体で感謝をあらわしてる。だから、そこにたくさんの生き物がひしめく神聖な大地を切り売りして売買したり「開発」したりなど、思いつくことすら不可能だ。

もし感謝を教えるのだったら、まずは、まずは感謝を生きて欲しい、それをライフスタイルに、社会の仕組みにきちんと落とし込んで、自然や互いから奪い合うような生き方をまずはしないで欲しいというのが、アボリジニの人たちの言い分だ。圧倒的に、「自分さえよければ」と取り合い、競争することでなりたつ世界の中に、ところどころ申し訳程度に、感謝の気持ちをあらわす島をポツリポツリと浮かべることで、なんとか気が狂わないようにするなんてことはしないで欲しいというわけだ。

それは、見たい世界そのものになることをモットーにするナウトピアンの言い分でもあると思う。難しく見えるけど、ガンジーのいうように、「見たい変化にまずはあなたがなる」ことが本当にできれば、おのずとできることなんじゃないかって思う。

言い訳のような部分的解決だったら、私たちの世界に、ごまんとある。時々、地球にやさしいエコ商品を買うとか、クリスマスや誕生日だけ贈り物をするとか。余暇にアートに触れる、趣味としてアートを嗜むときだけ、クリエィティブになるとか。自然に囲まれたリゾートの中でマッサージを受けてるときだけ、すべてのものとの一体感を感じるとか。

もちろんこうした体験が、生き方全体に及ぶようなもっと広範な変化への入り口になることがあるのは確か。でも、本気で変化したかったら、それを生き方全体に、社会の仕組みの全体におとしこまなきゃいけない。たとえば、「生かされていること」そのものをすでに贈り物として受け取る、その感謝の気持ちを表しながら一瞬一瞬を生きる。生活全体をアートに高め、美的、倫理的に自分で納得できること以外はやらないようにする。たまに祝祭なのではなく、毎日が祝祭というふうに。

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