草の根活動の紹介

木工の文化を現代感覚で世界に目を向ける若手木工作家の活動ユニット

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mickle(ミクル) | 旭川市

旭川家具といえば世界に聞こえたブランド。豊かな森林資源と多くの職工を抱える旭川圏は木工文化の一大拠点だ。作家の工房に大規模な木材倉庫がないのも、本州の作家には驚きだったという。材料の木材は近郊で安定して入手できるからだ。一生付き合える旭川家具だが、高価で重厚なイメージがあり、普段使いの日用品とはなりにくい面もあった。

そうした中で、2006年11月、㈲高橋工芸の高橋秀寿氏を中心に、旭川を拠点に活動する若手クラフトユニット「mickle(ミクル)」が結成された。2010年の現在、メンバーは12名。それぞれが自分の工房で制作を行い個人で活動する一方、ユニットとして道内外で展示や販売、ワークショップなどを行い、新しい旭川発のクラフト文化を紹介している。参加メンバーは主に工房の2代目の若手達。実直無骨な印象が強かった旭川クラフトの底力に、現代的なセンスを持ち込んだ。

作例をあげると、創立当時の中心メンバーだった高橋秀寿さんが企画開発した「KAMI Glass」シリーズは、全国どの展示会でも人気が高い。ロクロ挽きによる木製テーブルウエアのベテランだった高橋さんの技術を見込んだバイヤーが、「紙のように薄い木挽きグラス」を提案。ガラスでなく木で、という試みだ。試行錯誤の末に完成したグラスは厚さが僅か2ミリ。灯にかざすと向こうが透けて見える。その技術と感性は驚きと評判を呼び、日本デザインコミッティー企画展「デザイン物産展ニッポン」(2008年東京)の各県1品の北海道デザイン代表に選ばれた。高橋さんはその後ミクルを卒業し、現在は後続の若手達の活動を蔭から支えている。

旭川圏の木工文化の層は元々が厚い。20年以上にもわたって、木の家具に限定した「国際家具デザインコンペティション」が開かれ、世界50ヶ国国から応募がある。エントリーしたデザイン画を地元メーカーが試作し、実物にして審査する。世界中から集まるデザインと、地域の技術力とが結び付き、新しい家具文化を発信する底力をたたえているのだ。

今、若い世代が中心となり、地元に蓄積されてきた草の根の技術と文化を、一般にも開かれた形で発信し始めている。

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