草の根活動の紹介

札幌劇場史の流れを見すえて─活動体としての劇場の担い手

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レッドベリースタジオ 飯塚優 | 札幌市

札幌4丁目プラザ7階の自由市場にかつてあったホールのマネジメントの仕事についたきっかけで、1970年代小劇場、アングラ劇に深くかかわるようになる。その後、演劇、映画を中心とした自由な創造、発信の場だった熱気あるインデペンデントフリースペース、駅裏8号倉庫の成立と運営に尽力。自由にアイディアを羽ばたかせ徹底的に議論しながら進めるこのスペースの共同運営体制は、草の根文化のマネジメントのお手本の一つ。駅裏8号倉庫がなくなった後も、人の出会い、コミュニケーション、創造性を蓄積するメディアとしての空間づくりを、新たに個人運営のフリースペース、レッドベリースタジオで実践することになる。

制度としての演劇の枠組みや劇場の壁を越えて、広く社会状況にも働きかけ、新しい世界を作ろうとした小劇場時代の精神を受け継ぐ貴重な人物。近年、ことに既成の枠組みにこじんまりとまとまる表現が優勢になってきたのに危機感を抱き、箱ならぬ活動体としての劇場を提唱。演劇の持つコミュニケーションのポテンシャルを掘り下げ、世代や障害、マイノリティの壁を超え相互理解を深めるワークショップや、高齢者の語りによる地域史の編纂と演劇への取り込みなど、社会の中での演劇の役割を深く掘り下げるアウトリーチ活動もさかんに行われている。広義の演劇性を社会に生かすこうしたアウトリーチ活動により、演劇人たちの生活を成り立たせ、演劇創造そのもので食べていくという広大なプランもあたためておられる。

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