草の根活動の紹介

サンフランシスコ禅センター 見聞記

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サンフランシスコ禅センターは、1961年に鈴木俊隆がはじめた曹洞宗の禅寺だ。現地の日系人のために寺をたてるつもりが、当時、対抗文化の中で禅が流行してたせいもあり、やってきたのは、長髪のヒッピーの若者ばかり。そんなわけで、とても自由な気風の禅寺ができた。禅寺と言ってもその建物は、中央に噴水があり、レモンの樹が植わった中庭をめぐって回廊をぐるりとめぐらせたイタリア風の建築。アーチの下に仏像が置かれ、仏壇の上にはシャンデリアがつるされ、青い目をした白人のお坊さんが、袈裟を来てそぞろ歩いている。
毎週土曜日の座禅と法話には、入れないほど沢山の人が来る。法話が終わると、教会のミサの後のようにクッキーが振る舞われる。お茶を飲みながら、なぜ禅がここでこんなにポピュラーなのか。何人かに聞いてみた。「禅をやってたスティーブ・ジョブズの影響もあるね。IT関係者がかなり来てる。どんどん小型に、シンプルになっていく日本型の技術の背後には禅があるんじゃないの?」「アメリカ人は生産性向上のパラノイアで、スケジュールぎっしり詰め込んで、一度に少しでもたくさんのことをやろうとする。壁をながめて何時間も何もせず、ただ座り続ける座禅はまさにその正反対。だから癒されるし新鮮なんだ」。「アメリカは多様で、内に沢山文化的宗教的対立を抱えてる、原理主義の宗教勢力にも悩まされてるし。そんな中、特定の信条に執着しない、完全にリベラルな宗教のニーズがあるんだ。『仏にあったら仏を殺せ』という禅は、ぴったりだ」という人も。なるほど、と腑に落ちた次第である。

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