ナウトピアのつくり方

手仕事からナウトピアへ

  • LINEで送る

大枚はたいて買ったものが、外側は、綺麗だけど、内側は、安物のハリボテなのに気づいたり、使い始めた途端、壊れてしまった。そういうときには、ショックを受けるよね。そんなとき、私の場合、何が一番耐えられないかというと、買ってくれる人、使ってくれる人を、大切に思ってくれていないこと。「こんなんで、いいでしょう?」というやっつけ仕事をつきつけてるわけだから。また、そんな仕事をしてる人も、お金が必要だから仕方がないやと、身売りをするようにして、仕事に従事している人、つまり、自分を大切にしていない人なんだなって、感じてしまうから。

つまり、自分を大切にしていないから、他者も大切にできない、そんな自己蔑視と他者蔑視の融合が、なんとなく伝わってきて、やるせない気分になってしまうから。これこそ、貧しさだって思う。

私が手仕事が好きなのは、まさに真逆のものがそこにあるからだ。この仕事ができて幸せ。やりがいを感じてる。みんなの中で自分がここに生きてる意味、この仕事を通して感じてる。やればやるほど自己肯定感が増す! この仕事をしてるとき、まさに生きてるって感じ。楽しいから、丁寧に、愛情を込めてやる。つまり、仕事そのものが、まず働く人自身にとって、すでにギフト、贈り物になってる。

その喜びは、作り手の手を離れた後も、ものにつきまとい、受け取った人、使う人も、幸せにしてくれる。そして自分も、大切にされてるって思う。

もちろんそうやって作られたものは、心のこもった、高品質のものがほとんどだ。
だけど、何が一番うれしいかというと、作り手の、自分を、人を、時間を大切に思うその気持ちが、完成品から放射されていて、それを使うたびに、ゆたかな気分にさせてくれること。使うたびに、あなたも大切な人って言われてる気がすること。

自分と人を大切にしながら、生きていく姿勢を、受け手に、また周りで見てる人にも感じてもらう。教えさとすのではなく、仕事の成果、仕事ぶりそのものをみてもらうかたちで。するとこれに感化されて、自分と人を大切にしながら、生きようとする人が増えていく・・・

良い仕事が人と人の間を動くたびに感じられる、そんな自他融合的な肯定感を、魂と呼ぼう。仕事にみなぎる魂こそ、一番のギフト。仕事で、平和で、美しく、幸せな世界をつくろうとするとき、一番大切な材料になる。私たちがこれから作っていきたい新しい世界、ナウトピアを、建物にたとえるとすれば、それを少しずつ積み上げていく一個一個のレンガのような役割を果たすのが、この魂だ。

  • LINEで送る