ナウトピアのつくり方

「自分で手作り」から革命を起こす(?)ための心得

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ナウトピアとは、ユートピア・ナウを略したもの。今、ここで、自分から、直接行動に出ることで、自分が見たい世界をつくる生き方のことです。たとえば環境保護の政党に票を入れるのもいいけれど、一人一本、木を植えた方が、ずっと早く目標に達せます。間接的な手続きに頼る割合が増えるほど、本題とは直接関わりのない手続きの迷路に迷い込んだり、操られ、搾り取られるリスクが高まります。

反対運動に始終するより、それに変わるポジティブな行動をする。とくに衣食住、エネルギーといった生きるために必要不可欠なことを自分の手で直接できるようになる。その度合いが高まるにつれ、行き過ぎたグローバル資本主義など私たちを生きづらくしているシステムからの独立の度合いが高まるし、経済危機や災害などのリスクからの耐性も高くなります。

この会では、その元祖が、インド産の綿をイギリスの工場に渡さず、自分たちで糸紡ぎ、機織りして自分たちで着ることでインド独立を実現したガンディーのチャルカ運動にあることをまず確認。そこから学べることを学んだ後、とはいっても、多様化した今の社会。ガンディーの鶴の一声で、皆が一斉にカディーをつくるといったスタイルは、そぐわない。それに支配や操作が生活のすみずみにまで及んだ今の私たちの現状にも合わないと言えるかも。脱産業化が進み、搾取・独占のターゲットになっている資源は、たとえば綿花のようなものというより、クリエィティビティや人間関係です。むしろ、一人一人が自分たちのよろこびのため、生存のために必要だと思うことができるように、生産手段やノウハウを共有できる自由な作業場をコミュニティで持つ。それは、素材を供給してくれる自然から、技術の伝承、蓄積などなど、ものづくりをめぐる物語が集まるところ。その協働のウェブに自分も参加できるところ。企画化されコマーシャライズされたマニュアルに従う代わりに、この協働関係そのものを、書物がわりにしてまなべるところ。

そこで楽しく、教えあったり助け合ったりはするけど、自由に、一人一人違う物をつくる・・・なんてのがいいかもしれないなどと、提案したいとも思っています。

たとえば食べ物がいるときには、スーパーの代わりにコミュニティ・ガーデンにいって野菜を育てたり、摘んだりできる。学びたいときは学校の代わりに様々なテーマで、共に学んだり議論できるスペースや図書館に行く。服が必要なら、ブティックの代わりにリサイクルの服や素材が集まっていて、糸紡ぎや機織り、裁縫、編み物、着付けのノウハウを教えたり学んだりできるワークショップに行くなど。

生産を取り巻く協働のウェブは、資本主義の独占と搾取関係で歪んでいるけれど、そこでの実践を通して、それを繕いながら、きれいに織り直すことができる。
それは同時に、私たち自身が、そこに参加し、まなびながら、自分も寄与する自律的な力をとりもどすプロセスでもある。

そうこうするうちに、ものものしく希少視され、お金儲けの道具にされてきたものを「どこにでもあるもの」にできると、いいな。

といってもグローバル資本主義の発想パターンは私たちの心に染み付いていてなかなかそこから抜けられないのも事実です。たとえば、材料はいつでもどこでもいくらでも手に入れることができるといった前提でものづくりしても、持続可能な生き方はできないし、季節や風土や社会が自然に私たちに課す制限やゆたかさに親しむこともできません。また、マニュアル通りに、キットを揃えて・・・などといっていると、いつのまにか、金儲けのために企業がつくったシステムの中に取り込まれ、その中で踊らされているだけなんてことになりかねません。

一つ一つのもには、人の自立する力を増すものなのか、減退させるものなのか、見極める必要がある。編み棒、絵筆など、道具はたいてい、私たちの力を引き出す役割をする。
素材はどうだろう。どんなものを作っても面白くできる糸などは、力を削ぐ。でも、しょうもない糸から、面白いものを作る時、私たちはそこに価値を作ってる。
力を増すものは、それ自体には価値がないけれど、そこから価値がうまれていく。その素材、きっかけ、同義になってくれるもの。
価値はあくまで自分で作るという決意がいる。

、何より、忍耐強さもいる手作業のこと、思いっきり楽しくないと長続きしません!ナウトピアという言葉には、目標に近づく一歩一歩、今、ここに、すでにゴールを見出してるという意味あいもあります。衣類づくりの手作業は、その点、安心。素材の手触り、色彩や陰影をたのしみながら、それらがやってきた自然に抱かれているような感じを味わったり、無駄なく、賢く、エレガントな技やパターンの伝承のうちに、昔の人たち、ご先祖様に思いを馳せることだってできる。そんな体験談も大募集です。

この会では、『ナウトピアへ』の本の中に出て来たアクション機織り人のトラヴィス・メニノルフの例をあげながら、ものだけでなく、ものをとりまくシステムまで組み替えて、革命を起こせるものづくりの可能性について、みなさんと一緒に考えることができたらと思っています。
(写真は、バークレー美術館でのトラビス・メニノルフのワークショップで撮ったもの。生まれて初めて機織り体験。しかしその數十分後には、地元の子供達にやり方を教えるはめに)