イベント

ナウトピア流 よろこびの最大化からガンディーを読み解く

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日時:2016年6月19日 19:00 – 20:30
場所: from Earth Cafe OHANA (ふろむあーすカフェ・オハナ)
東京都世田谷区1−32−6 (1F)電話 03-5433-8787
参加費: ワンオーダー+ドネーション(金額自由)
申し込み:堀田までメールください makikohorita@gmail.com

持続可能に暮らすにはどうすればいいか、生きとし生けるものとの循環、再生の輪に自分を埋め込みながら、その邪魔をせず、できればそれが健やかに修復されるようにつつましやかに暮らせばいいってこと、私たちにはだいたいわかっているのではないかと思います。

でも、わかっていてもやめられない。ということは、モラルというより一種の快楽原理に訴えて、本物のよろこびが、こっちにあることをしっかり示せばいいわけです。オルタナティブの方に、よろこびの最大化があることを示すナウトピアのアプローチはこれを探求するものです。

ディープ・エコロジーのアルネ・ネスは、皮膚の境界を超え、他の生き物と一体感を感じる「エコロジカルな自己」にまで自己概念を広げれば、自然の保護、再生につとめることは、ストイックで自己否定的な苦行というより自己実現になると主張。この自己実現の考え方をガンディーに学んだと言いました。

しかし彼の本を紐解くと、無所有、無抵抗、禁欲、節制、断食と無い無いづくし。自己実現というより自己否定の世界に見えます。

ただ、もう少しつぶさに見ていくと、まさにこの否定がもっとスケールの大きなよろこびの入り口になっていたのが見えてきます。ものを諦めたり、放棄するのは、所有し、守り、防衛するちっぽけなエゴの殻をやぶり、生命の流れに加わるための跳躍台のような役割を果たしているのです。

自然の中には人間のように、今、ここで必要以上にものを貯蔵する存在など、ほとんどありません。糞さえ、別の生き物のごちそうになるというふうに、そこにはまったく無駄がなく、あらゆるものが、いつも別の何かに捧げられ、活用されてる最中にあります。そんな生命のギフトのリレーが進行中なので、自分だけのものとして私的に所有できるものなんて何にもないっていうことができます。

私有が許されない代わり、何も失われることもない安心感もあります。健やかで活発なエコシステムの相互作用の中では、循環が進行中なので、誰かにとられ活用された自分の余剰分は、循環の輪に入り、めぐりめぐって自分にまた栄養分を供給することになるだろうからです。

こうした自然の循環の輪のなかに加わり、生きとし生けるもの全体とつながる自己を目覚めさせるためには、人間の世界のなかで私有や貯蔵と呼ばれる習癖は、捨て去る必要があったのです。

それは一見、自己否定に見ます。でも、生命全体の循環の輪のなかにちゃんと加われ、これと一つになれるという点では自己実現そのものだといえます。

生命の流れ全体につながるにつれ、とっておきのよろこび、安心感が生まれてくる。それが生き生き目覚めてくるにつれ、旧い人間社会のシステムの硬直から、距離をとったり、身をもぎ離すこともできるようになります。

たとえば、「本当はやるべきでない」と思っていても、「これがなくちゃ生きていけない」と思いこみ加担してきたシステムからも、軽々と足をあらって独立し、それに代わるものを自分でこつこつつくるチャルカ運動も始めることができるようになります。

また相手が帝国主義や軍国主義的ファシズム、抑圧や搾取の権化でも、悪いのはその人が囚われているシステムであって、その人自身ではないという洞察も得られます。そこから、相手が囚われているこのシステムには、不服従を貫くけれど、その人自身は礼儀をつくして歓待し、どんな暴力を向けられても甘んじて受けようという非暴力・不服従運動のスタイルも、自然に出てくることになります。

第二次世界大戦中、日本軍がインドの目前まで迫ってきた時、ガンディーは、「私たちは日本人に対する愛を募らせましょう。でも日本軍が私たちを征服しても、断固として彼らに従うことは拒否しましょう。彼らのためにです」と言ったものでした。

そんなふうに経済的、政治的インパクトもたっぷりの、放棄によって手に入れるこの一体のよろこびを、どんなふうにナウトピアの運動に取り入れ、生かしていけるか、考えていきたいと思ってます。

堀田真紀子 福岡県生まれ。東京大学人文社会学研究科修士課程終了、博士課程中途退学、1994年より北海道大学言語文化部、国際広報メディア・観光学院で教鞭をとる。専門は芸術の社会機能。札幌の自宅一部を開放して、芸術の発想を生活の変化へつなげる「ひと・ギャラリー森のひろば」、大学の研究プロジェクトをベースに、生活の文化と社会変革の関係について考える「草の根文化研究会」主宰。近年は、パートナーが立ち上げた由仁実験芸術農場という自然やコミュニティをまきこむものづくりの場を手伝いながら、札幌から夕張郡へと段階的な移住をすすめる。2015年、これらの場の運営と、田舎暮らしを本格化させるため、北海道大学を辞職。

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