べてるの家 | 浦河町
精神障害者への地域の支援体制の弱さをなげきつつも、地域経済の弱体を目の当たりにして、その惨状を自分たちの苦しみと重ね合わせたとき、逆に自分たちこそ「地域のために昆布を売ろう」と発想を転換、起業運動をはじめたという1984年設立の北海道浦河町にある精神障害のための地域活動拠点。社会福祉法人浦河べてるの家(2002年法人化―小規模授産施設2箇所、共同住居12箇所、グループホーム3箇所を運営)、有限会社福祉ショップべてるなどの活動の総体。障害者、介護者、医師などからなる、そこで暮らす当事者達にとっては、生活共同体、働く場としての共同体、ケアの共同体という3つの性格を持つ。
「昇る人生から降りる人生へ」「偏見差別大歓迎」、「弱さを絆に」といった一見逆説的だけど、妙に地に足ついた脱力系人生哲学を実践。ユニークな当事者研究でも知られ、日本の精神保健におけるベスト事例の一つに選ばれている。障害者が自分の幻覚や妄想の発表などを行う「べてるまつり」は全国的な反響を呼び、障害あっての祭りの盛り上がりに、2010年の幻覚&妄想大会では積年の障害者に「治ってないで賞」を授与するにいたる。
障害者を正常の鋳型にはめるよりも、ありのままに生きる権利をみとめ、社会のなかに居場所を作っていく自助的な運動体としてのその姿は、きわめて草の根的だといえる。