草の根活動の紹介

アートプロジェクトと農業の出会い

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佐伯農場と東一条ギャラリー | 中標津町

酪農のマチ中標津町の、のどかな農村風景の中にある「佐伯農場」は、ただの牧場ではない。約100 ヘクタールの敷地内に、レストラン、遊休サイロを活用した美術館や写真館、ギャラリー倉庫、またアートオブジェも多数点在する。1974年からは、東京近郊の子供達を対象に夏キャンプ「むそう村」の受け入れも続けている。

2代目オーナーの佐伯雅視さんは1975年に事業を引き継いだ。牛乳の消費が伸び悩み活路を模索する中、1988年に近郊の酪農グループとともに当時はまだ珍しかった農場レストラン「牧舎」を始めた。その後2001年から牧場内に美術館やギャラリーを開設し中標津ゆかりの作家による作品を紹介。農場コンサート等も企画する。2009年8月には中標津市街に「東一条ギャラリー」をオープンし、道東の作家の作品展示を始めた。他にも、2006年には歩く文化の復権を唱える「北根室ランチウェイ」を地元で立ち上げるなど、地域の中で「人が楽しく生きるには」を考え、新しい農村文化を提唱してきた。

酪農家として多忙な毎日を送りながら、その合間を縫って活動を展開する佐伯さん。牛も育てるが、根っからの人間好き。道内外から多くの芸術家や工芸家達が、佐伯さんの人柄に魅かれてギャラリーに集まる。「アートや音楽の活動をしている人が、目先の利益とか有名になりたいとかではなく、自分のやりたいことをただひたすらにやっている、その姿に魅かれます。そういう人達から得られるものが楽しくてやっています」と語る。

道東の農場で、現代人が見失ってきた価値観の再発見や、風土や農業に基づいた作品への応援がその草の根を拡げている。

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