詩 

「何にもわかんない!」窓を開けると、世界が新たによみがえる!

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締め切った部屋の中で、濁った空気がたまってムンムンしてる。そんな閉塞感の中で生きてるみたいな気がすることがある。世界が窮屈で、身動きできないそこから出ようと、ちょっと遠くにでかけても、ロケーションと配役だけ変えて、どこかで見たような、似たようなドラマが繰り返されるばかり。

そんな時は、自分の目の方が、ちょっと変じゃないかって考えた方がいい。世界を見るとき、そこにあるものの意味を決めつける分厚い色眼鏡をつけっぱなしにしていないかな? ほとんどの人はこれをしっかりかけているのだけど、時々メガネのレンズがあまりに分厚くなってしまって、どこを歩いても、まるで洞穴を探求してるみたいに、世界が小さく、薄暗〜く見えることがあるよ。

どんなに分厚くなったメガネも外すことができる合言葉がある。「私はこれがなんなのか、まったくわからない」。これを、目にするものすべてについて、心の中で唱えてみて。最初はばかばかしく思えたり、不安になってくるかもしれない。それでも構わずに、唱え続けていると、だんだん楽しくなってくる。この人は、もしかすると、自分が思ってるのと全然違う人。想像もつかないような任務を帯びているのかも。小さい頃から大切にしてるこのぬいぐるみだって、何だか、あらためて見直して見ると、なんだかよくわからない。あやしいぞ・・・。

そうやっていろんなものと出会うのが、解放的で、わくわくするような冒険に思えてきたら大成功。

もう少しこのワークを続けてると、わかんないって思えば思うほど、自分の心の奥に、「すべてを知ってる」部分があって、それが生き生きと感じられてくるかもしれない。

何が何だか、全然わかんないけど、自分の中のこの存在が、すべてを知っていてくれるんだから、まっいいか。その人に、すべておまかせしよう。そんなふうに感じることで、どんどん心がオープンになり、風通しがよくなり、まるで空を飛んでいるような自由な気分。それに、安心感も湧いてくる。すべてを知っているあなたのまなざしの下、私はとことんわかんない、わかんなさを楽しめる。そんなふうに、わかんないと思えば思うほど、すべてを見透かしているあなたと一体であるって感じられる・・・この循環を繰り返すうちに、だんだん、ますます絶望的に「わからなくなる」ぬいぐるみのクマや、友達が、私自身の「すべてを知ってる」部分と、不可分な一体をなしてるって感じられてくる。

これは私にとって大切な気づきだった。

忙しくはあるけれど、確固とした目標を保証してくれる職をやめて、暗中模索の生活をはじめたときに悩まされたのが、無意味感。いろんな目標達成する野心や名誉欲を手放すのは割と簡単。だけど、それがなくなったときにポッカリ空いた意味の空虚に向き合うのは結構難しい。庭仕事でもお絵かきでも、お話づくりでも、編み物でも、とにかくピンとくること、好きなこと、夢中になれることをする。でも、ふと立ち止まって、「いったい私は何をしてるんだろう?」「いったい何のために?こんなことをしてるんだろう?」と考えると、答えが見つからないのに、ぞっとしてしまう。

もちろん、また別の「専門家」になればいい、たとえば編み物研究家? などと考えることもできるけれど、この手の道はもうとことん歩きつくしていて、自分向きではないこと、ちっとも幸せになれなかったって、知ってる。何を今さらって思ってしまう。

全く同じことを、趣向を変えて繰り返すのはもういい。むしろ、目標を全然設定できないこの無意味さに耐えて、その先になにがあるかを見極めてみたいな。はたから見れば荒唐無稽、意味不明でも、構いはしない。そうやって、今度はとことん開き直ると、あら不思議。これでいいんだって、安心感が湧いてきたよ。落ちるところまで落ちると、地面がしっかり支えてくれるのに似てるかな?

なぜ私が生きているのかも、こうして文章を書いているのかも、さっぱりわからない。わからないわからない・・・・と思うほど、この安心感は強まっていく。

だからと言って、わかった気になって、いろんな「重要」なことに励んでいる人たちに違和感を感じたり、まだまだね・・・なんて傲慢に思うこともない。そこに、それぞれ、せいいっぱいのかたちで表現しようとしてる愛が透けて見えるから。「わからなさ」の先にあるものは、多分、愛そのものなんだ。

アメリカのスピリチュアルな師のリサさんのところに、あるとき、億万長者で企業のトップだった人がやってきて、つましいボランティアとして働きはじめたのだそうだ。ただその人は、何でも自分が一番正しいやり方を知ってて、お説教したり、人を顎で使うスタイルが板についていて、そこでもそれが出てしまう。

そのたびに、リサさんは、ただ彼をじっと見つめ返していたのだそう。あるとき彼女は、そんなふうに彼を見つめてから、次のように言ったのだとか。

「あなたがそうやってくどくどしゃべってることはみんな、別のたった一つのことを言わないで済むための逃げなんじゃないかしら?」

「そのたった一つのことってなんだい?」と、その億万長者がたずねると、

リサさんは、また彼の顔をじっと見つめて、「『僕は君を愛してる、リサ』よ」。

なんて自信満々!なんて思ってしまうけど、その後、彼は「その通りだ!」と叫び、「僕は君を愛してる、みんなを愛してる、人生を愛してる・・・でも、それを真正面から直視するのをとても怖がって、わかったふりをして逃げてたんだ!」と合点がいったとか。その後、彼の態度は一変してしまったのだという。

お話

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どうも気がかりなことがあって、今日は気持ちが晴れない。
からだも重くて、だるい。
そんなときには、新鮮でひんやりした空気が感じられる場所、さわやかな風が吹いてくる場所を心の中に探ってみよう。

泉の上や、その周りに見つかるかもしれない。もしかしたら、その中に見つかるかもしれない。

見つかったら、そこにもっと近づいてみよう。
するとそこに、窓があるのに、君は気づく。

へーっ、泉があったりするんで、僕、てっきり外だとおもってたけど、そうじゃなかったんだね。洞窟の中の泉だったのかしら。

気がかりなことがある。自由じゃないって思える限り、いつだってまだまだ外があるんだ。夢から覚めるとまた夢だったって気づくみたいに。

窓の奥にどんな景色が見えるかな?

何だかとてもすごい景色。ワクワクドキドキする景色だってことはわかるけど・・・
でも、おぼろに霞んではっきり見えないよ。

そんな時には、覚えておいて。

この窓の奥にあるものは、「何が何だかわからない。お手上げだ!」って思えば思うほど、はっきり見えてくる、近づいてくるってことを。

そこに何かあるのは分かるけど、それが何だか、見当もつかない。さっぱりわからない。想像もつかない。

そうするとだんだんだんだん、窓から明るい、暖かな光がさしてきたよ。

謎だ、不思議だって思うほど、大きく膨らんで、やさしく包み込んでくれる。

気がつくと、窓も消えて、ただただ、光に抱きしめられてる僕がいるばかり。
あなたは誰なのか、さっぱりわからない。見当もつかない。そう思えば思うほど、光は増し、暖かさも増し、日向ぼっこしてるような、何とも言えない、いい気持ち。


しばらくすると、僕は今日ずっと頭が痛かったのを思い出した。
思い出したら、本当に痛みを感じ始めた。さっきまで忘れてたのになあ。

すると、まだずっと僕を抱きしめてくれてる人の声が聞こえた。

「からだに向かっても、あなたが何なのか、僕はさっぱりわからないって言ってごらん」

そう言われると、本当にそんな感じがしてきた。そんなわけで、「からださん、ぼくはあなたが何なのか、本当に、さっぱりわからあくって、頭を抱えてるよ」って言ってみた。

その瞬間、にそれまで体だっておもってたものが、砂のようにぼろぼろ崩れて、風に吹き飛ばされていく。ひゃ〜っびっくり。

何がおこったのか、それこそ、まったく「わからない」。

でも、一緒に体のだるさ、重さも吹き飛んで、軽やか。

「今、心底幸せだってこと以外、みんな忘れていいんだよ。最近気がかりだったこと、覚えてる?」
僕をまだひしっと抱きしめてくれてる、あの声がまた聞こえてきた。

「お父さんが、会社に言ったっきりで、家にほとんどいないんだ。たまに顔をみかけるけれど・・・いつか、戻って来なくなるんじゃないかって、心配なんだ。

母さんは、最近、スーパーでレジを打ってる。気晴らしだ、楽しくやってるっていうけど、僕、この間、迎えに行って、びっくりしたよ。眉間にしわを寄せて、何か我慢してるみたいで、あんな顔つきの母さん、見たことない。

それにね。僕、学校の後、野原で遊んでると、楽しくって楽しくって、いつも宿題のこと忘れてしまうんだ。で、先生もあきれて、最近は、宿題を出すたびに、『けんた君は、ちゃんとメモしてるかな?』なんて僕をじっとにらんだりするもんだから、みんなクスクス笑うんだよ。そのモノマネをして、いじめる子さえ出てきたよ。」

すると、その人は、僕を抱きしめたまま、ひときわ強く、暖かく輝いて、言った。

「そのすべてに、私と一緒に『分かんないよ!』って言ってあげたら?」ってね。

すると本当にそんな気がしてきたので、お父さんに、お母さんに、先生に、いじめっ子たちに、大声で叫んだよ。

「あなたが何をしているのか、さっぱりわからない! あなたが誰なのかさえ、僕にはさっぱりわからないんだ」。

すると、びっくり、いやな学校も、宿題も、お父さんがいつも無表情で出かけてく会社も、お母さんがパートでレジを打ちに行くスーパーも、みんな一緒に、チリになって、風に舞って、消えて行く様子が目に映った。

さっき、僕の身体がチリになって消えて言ったのと、ちょうど同じ具合に!

それと一緒に、あらゆる悩みも消えていく。なんという解放感だろう!

その後、でも、何にもなくなったかっていうと、そうじゃない。
学校やスーパーや、会社や家があったところに、今はとっても綺麗な星が、キラキラ瞬いてる。

そこにいた人たちだ!

学校が塵になって消えた後に瞬いてるのは、ぼくの友達や先生たち。
会社が消えた後も、そこで一生懸命働いてる人たちは、きらきら輝いてる。
スーパーの店員さんたちやお客さんたちも残って、瞬きながらおしゃべりを楽しんで、笑ってる。

塵に過ぎない灰色の建物の中にいた時には、みんなどんよりした顔をして見えたけれど、今はとっても楽しそう。

これまでだって、どんなところに閉じ込められていても、みんなせいいっぱい
できる範囲、想像できる範囲で
みんなが大好きなこと、みんなにどんなに感謝してるかを表現しようって、頑張ってたんだ。

怖い先生も、いじめっ子も、疲れた顔をしてレジを打つお母さんも。

でも今は、これまでとちょっと違う。

塵にすぎなかったものが、本当に塵に戻ってくれたおかげで、
思いっきり羽目を外して、自由に愛をあらわせる。のびのび、ゆっくり深呼吸しながら、ひときわ強く輝ける。

よかったね!

と思ってると、
みんな僕たちがいる泉の方へ向かって来たよ。
というのも、僕は、泉の底で、あったかくて、明るい人と抱き合っていたんだからね。

泉のほとりで、僕の友達は、歓声をあげて大はしゃぎしたり、感慨にふけってじっと佇んでるのは先生。お母さんはお父さんと手をつないで、「まあまあまあ」と、喜びの涙をすーっと流してる。

しばらくするとみんな泉に入って来て、
その後のことは、僕も忘れてしまった。


朝起きて、いつものように朝ごはんを食べて、学校へ行った。
いつもとまったく同じ朝。

でも、お父さんの顔は、いつもよりちょっと優し気。お母さんはきれいに見える。お父さんは会社に、お母さんは午後からまたスーパーにパートに行く。ということは、どちらも、まだちゃんとあるんだな。壊れたように見えたのは気のせい、夢の中? って思うけど、でも、そんなこと、僕にも「わからない」

本当はもう、とうの昔にないのかもしれない。いつか、それをわかってもらって、みんなでしあわせになるんだって思う。

学校もまだちゃんとあるし、また宿題も忘れてしまってた。同じような1日が始まる。でも、みんな泉のほとりで出会って、水影に光を映して一つになったお星様仲間。輝く目をみるたびに、うれしく、なつかしくて、抱きしめたくなっちゃう。

先生には宿題してこなかったことを謝らなきゃいけなかったけど、でも、昨日僕が体験したことをうまく話して、わかってもらえたら、宿題を完璧にやってくるより、先生もずっとよろこぶぞって思うと、笑いが抑えられなくて困ったよ。

それにまた生きづらく感じられることがあったら、あの魔法の言葉、「僕は何にも知らない」を繰り返せばいいのだから。その瞬間、窓の向こうから、あの人が現れて、世界の中のどうでもいいものはすべて、また塵になって消え、生命だけが、またたく星になって蘇るってことも、わかってるから。

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