アナスタシア

アナスタシアに近づく作法

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アナスタシア自身、自分についての本がかかれるとすれば、どんなアプローチをのぞむだろうか? 考えてみた。

例えば、2巻で出て来た研究部隊のような態度は、望まないだろう。彼らはアナスタシアを捕まえて、モスクワ近郊の森に彼女の棲む森と全く同じ状況を作り、そこに彼女を住まわせる一方、好きなだけ彼女を研究材料にしようとした。

武装した人たちまで動員して、力づくでも彼女を連れ帰ろうとする態度はもちろん言語道断だ。しかし、もっと穏やかな、対話的な態度で説き伏せて、仮に彼女が同意したとしても(もちろんそんなことはありえないけれど)、彼らにできるのは、外側から彼女に近づくだけ。驚異的な能力を発揮する森の隠者として好奇心の的になり、脳波などを、測定しようとするだろう。

でも何が彼女をそうさせているのか、なぜ彼女がそんな能力を発揮できるのかについて、つまり彼女の本質には、触れることすらできない。それどころか、そうやって彼女に近づけば近づくほど、そこから遠ざかることになるだろう。

捕獲したり、機器を使った科学的測定の対象にしなくても、分析的な態度はすべてその類いだって考えられる。

彼女自身が多分私たちに望んでいるのは、『共同の創造』で、神が人間に望んだことに近いんじゃないかって思う。地球の生命とその相互依存性が見せる完璧な調和が、どのように、何によって創造されたのか。宇宙のあらゆる本質が、躍起になってそれを知ろうとした秘密は、結局、解き明かせないこと。

人間が神にそれを教えてくれというたびに、神は人間に、意識からこの疑問自体を手放すように請うて、次のように言ったのだった。

「頼む、息子よ、創造をするのだ。おまえには地球の空間でも、それとは異なる世界でも創造する力がある。おまえの夢に描かれたものは実現する。私のたった一つの願いは、解き明かそうとしないでほしいということだ。どのような力で全てが成り立っているのかを」(共69)

どうすれば神のように創造できるか、その方法を把握することは決してできない。
なのに、わからないまま、思い切ってやってみると、神と同じように創造することはできる。
つまり神と同じように創造する中でしか、神を知ることはできない。

これは一見、矛盾だけれど、アナスタシア自身も比較しているように、アーティストの創造行為に似てる。二流三流の作品は別として、偉大な作品が、100パーセント理論や周到な分析や計算通りに生まれたことは、いまだかつてない。理屈で説明するようなアート作品は、人を感動させる力を持たない。アナスタシアも言うように、インスピレーションにかられて、偉大な作品を作っているとき、アーティストは自分が何をしているか知らない。「制作行為に没頭するあまり、どうやって筆を持っていたのか、何を考えていたのか、どこに立っていたのかということに一切注意を払っていない。後で思い出すことしかできない」(共71)。

他にも、アナスタシアの説くやり方で、性欲ではなく、子供が欲しいという気持ちだけから子供をつくろうとする男女も、受胎の瞬間、つまり性的な行為の記憶がまったくなくなるのだという。これも神的なインスピレーションの領域、創造の秘密、決して解き明かされない領域に入ったからだと考えられる。

だから私としては、この創造の秘密の領域に入るためにはどうすればいいか。アナスタシアの言葉を手がかりにしながらそれについて思いめぐらせることにして、彼女が誰なのか、なぜ不思議な知識や能力を持っているのかについては、立ち入らないでいたいと思うのだ。

先述の「研究部隊」がアナスタシア訪問の後、結局学ぶことになったこととも通じる。アナスタシアの秘密を本当に知るには、彼らにはたっぷりとした浄化が必要なこと(彼らの欲体が、早送りのかたちで見せたあの地獄のヴィジョン!)を思い知らされることになったわけだから。また、真に彼女を知ることができたのは、研究部隊の科学者、専門家ではなく、シベリアの寒村に住む、両親にも見捨てられた病気がちの少女、アニータだったってことも! アニータは、アナスタシアが何者かについて、科学的な説明は何もできないかもしれない。けれど、アナスタシアのおっぱいを飲んだあと、実際、アナスタシアのような「創造」をはじめ、周りの世界をどんどん変容させ始めたのだから。

というわけで私たちとしても、彼女のように創造しはじめるために、そのもとになるような「気持ち」を共有することに、焦点を合わせたいと思うのだ。それ自体の中に認識をたっぷり含みながら、新たな創造のはじまりをうながす「気持ち」を!

『共同の創造』の中で、神が人間に、

お前は地上を満たす。気持ちを通して全てを認識する。そしてその時、他の銀河でも、おまえの夢が、より美しい世界を再び再創造するだろう。

と言うように。

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