とても可愛らしい動物が。膝の上にちょこんと乗ってる、全身は、白地ベースに、灰色や赤茶色のぶちの毛皮に覆われてるけれど、体全体が細長く、蛇のようにしなやかで、掴みにくい。けれど、子猫みたいに、体をすり寄せてくる。大きさもちょうど子猫くらい。のんびり、気持ちよそうにまどろんでる。心臓の鼓動がさざなみをたてながら体を走り、私の体にも伝わって来る。そうやって、ただ、一緒にいるだけ。何を考えてるかわからないけれど、この子もここで、こうしているのが幸せでたまらなくて、私を信頼しきってることは伝わってくる。私の一番幸福だった時のすべての記憶が集められて、動物の姿をとって現れたよう。この子がそばにいる限り、私も幸福。大好き。
と思ったその瞬間、いろんな心配が湧いてきた。本当にきゃしゃで、か弱そう。食べさせなきゃ、死んじゃうかも。そもそもこの動物、何を食べて生きるんだろう? そもそも、なんていう動物? 調べなきゃ。家の中で飼えるののかしら? 家の中だと弱ってしまって、病気になったりしないかしら? いつか、逃げ出したりしないかしら?
で、この子を置いて、バタバタと、パソコンに向かい、図書館に行く。でもなんの動物なのか、わからない。とりあえず、獣医さんに電話。病原体など持っていないか、調べなきゃいけない、云々。ケージを買いに出かける。外に散歩をしに出かける時の首輪とリーシュも。どんな色のどんなデザインのものだと可愛らしいかな・・・・何を食べるかわからないので、とりあえず、キャットフードとドッグフード、ウサギの餌。お肉とお魚の切り身を買っていく。ああ忙しい。やることが急に増えたわ。
袋をかかえて戻って来ると、動物がいない。部屋は締め切ってたのに。影も形も見当たらない。ショック。半狂乱で探し回る。やっぱりいない。大声で泣きわめく。
しばらくすると、泣くのにも疲れて、あの子の姿を思い出す。とにかく、また一緒にいたい。それだけだったのに。絵に描いてみる。すると今度はそれに夢中になり、辛さも忘れてしまう。あの子が膝にいた時の幸福感が少し蘇って来る。そうそう、この感じ。これをあらわすために、やわらかい黄色をさそうかな。われながらよく描けてるかも、ちょっと離れて眺めてみる。
その瞬間、肩の上に柔らかくて、暖かな気配を感じて、びっくり。あの子がいた! 私の肩の上に乗って、一緒に絵をながめてるかのよう。
大喜びで胸に抱きしめる。すると、ドキドキ鼓動する心臓がその子と一緒に脈打って、その気持ち良さに溶けてしまいそう。同じ暖かさ、柔らかさ、私をじっとみつめる物言いたげなクリクリした黒い瞳。その瞳を見てると、実際言葉が聞こえてきた、というより感じられてきた。
「僕と、ただ、一緒にいて。それを感じて、楽しんでるだけで十分じゃない。僕は何にもいらないんだ。心配しなくていいよ。調べる必要も、駆け回る必要もない。どうすれば、僕といつも一緒にいれるかについては、ただ、僕に聞いて欲しいんだ!」
そうやって私の腕の中にいるこの子は、もはや生暖かく暗がりの中で丸まった動物ではない。天に無限にひろがっていく大空を背景に、それを背負って、ゆったり佇んでる。空に透けるように輝いて見える。「僕は、あなたの心の中に広がる青空。この空があるところに、僕はいる」
やっと見つけた!ずっと探してたもの! 壊れることも、なくすことも、死んでしまうこともない、絶対安心の宝物!
その子をケージの中で飼う計画は、流れてしまったけれど、心静かにおちついて、この子とただ、一緒にいたいって思うだけで、気づいてみると、いつでも肩の上にちょこんと乗ってくれてる。胸に抱きしめれば、ハート同士が溶け合って、なんとも言えないいい気持ち。
それから青空! この可愛い可愛い動物が、青空を背景に、その光に透けるように私の前に姿をあらわしたってことは、もう話したよね。この日以来、何をみるときも、そこに本当にあるのは青空なんだって思って、目の前のものを透かしてそれを背景に青空をみる癖がついた。そうすると、すかっとして、心が解放されていく。絶対安心だとも思う。青空をそこにしっかり感じた以上、それは私といつも一緒。何があっても、本当の意味では失われることはない。
