朝の寝覚め
朦朧としてるけど、気持ちいい。
その中で、一番好きなもののことを思って。
かあさん、かな? ペットの子犬でもいいし。
大好き大好きって心の中で抱きしめて。
するとだんだん、太陽の中にいるみたいに
あったか〜くなるね。
あたり一面、このあったか〜い光に包まれて
母さんや子犬も見えなくなる。
あっ
この光に溶けて、いるんだね。
僕と一つになってるんだね。
どんなに好き好きって、思っても、
完全には一つになれなくて、
寂しさ感じたことあるかもしれない、
悲しさ感じたことあるかもしれない
でもこの太陽の中ではそんなことはない
君があこがれたすべて
これからあこがれるかもしれないすべてが
ここにいるんだ
ここは本当、気持ちいい。
ここで、じっと安らいでいよう。
そうだね。ここから、出る必要なんてないんだよ。
一生、この中にいていいんだよ。
でも、起きなくて、いいの?
みんなを招けばいいよ。
愛しさがぎゅうぎゅうにつまったこの太陽の中で、
耳をすましてごらん。
あっ小鳥が鳴いてるね。
車もいるね。音がするもん。
そうやって、
「あっいるね」「あっいるね」って思うのが
うれしくって仕方ないよ
そのうれしい気持ちが、この太陽さんの暖かさに
じわ〜って溶けこんでいくの、わかるかい?
太陽さんの暖かさと、同じものでできてるのがわかるかい?
鳥の声も、車の音も・・?
耳に聞こえる音の一つ一つが愛しくて、たまらない
この気持ち、どうやってあらわしたらいいんだろう?
僕は、みんなが、歌を奏でる舞台になる
小鳥たちが、ソプラノ歌手みたいに、誇らかにさえずってる
車はベースかな?
僕は、僕は、それが一番素敵に聞こえる
空っぽの舞台。
そうであるのが、とってもうれしい!
舞台の底は何でできてる?
光でいっぱい。太陽さんだ。ここも太陽さんの中なんだね。
この光の中を、いろんな音が、ぐるぐる回って、ダンスしてるよ。
となりのおばさんの声も、加わった!
今度は、ちょっとずつ、薄目を開いてみようか。
布団が見える!
それは本当に布団かな?
太陽の中にいるのを忘れないで!
これが何だったか、僕はすっかり忘れたよ。あまりに幸せなんで・・・
そう思いながら、見つめてごらん。
何だかわからないけど、あたたかい薄ベージュのもっちりとふくらんだものが、
目に飛びこんでくる。
その上で、唐草模様が、妙に生き生きしながら、
踊ってる!
そうそう、その調子。
心の太陽の輪舞の中に、目に入るものすべて、残らず招待していくんだよ。
布団ももっちりと、盛り上がって見える。
僕に近づいてくるようだよ。
みんな一緒に、心の太陽の中でダンスの輪に加わっていくのを確かめながら、
少しずつ目を開いていこう。
壁が見える。白くて艶やかな、漆喰の壁。
見てるだけなんだけど、僕、これに内側から触れてるみたいな気がするよ。
この感触・・・
大好きな母さんや子犬を思ったとき、
小鳥や車の音の合唱を聞いた時と、
まったく同じ。
同じものでできてるね。
そうだよ、この優しい肌触りも、太陽さんに染みこんで、
音と光の輪舞に加わっていく。
机が静かにたたずんでる。この静けさも、太陽さんのものだね。
窓の外に空が見える。吸われそうに青いよ。
ようこそ、ようこそって、
そうやって、みんなをダンスの輪に招きながら1日を送るんだ。
心の太陽は、にぎやかな、にぎやかな舞台になるよ。
ただ、思考の罠にだけは気をつけて!
「僕はこれ、何だか知ってるもん。
〜に過ぎないじゃないか。
こんなのが何の役に立つの?
バカじゃない?」
そんな思いがよぎった途端
要注意!
晴れやかで、みんな大はしゃぎだったダンスの輪は、解散して、
明るい太陽は見えなくなって、
灰色の暗い、監獄ばかりが見えるようになる。
世界のほとんどの人はこの監獄の中で暮らしてる。
この中で、一生懸命、幸せを探しながら。
でも監獄の中ではね・・・無理だよね。
本当は簡単に出れるのにね。
どうやって出るの?
見慣れたものも含め、何に出くわしても
「これが何なのか、僕はさっぱり知らない。わからない」
毎日会ってる人に出くわしても、
「この人、本当は誰だろう? さっぱりわからない」
不思議だ、不思議だって思いながら、やさしく見つめて、耳をすまして・・・
するとだんだん、そこにはりめぐらされた思考の檻、鎖がゆるんで、
隙間から太陽の光がいっぱい漏れ出てくるから。
目の前にいる人の名前すら忘れてしまって、
顔をしっかり見ようとしても、
目が点々の一筆書きの顔みたいに見えてくるかもしれないね。
でも、びっくりする必要はないよ。
何が何だかわからなくなればなるほど、
やがてそこから、
とってもなつかしい人、愛しい人が顔を覗かせるから。
